「タトゥーは究極のアート」美漸が彫り続ける般若と美学|Bizen Art Tattoo Studio

東京・表参道と原宿、そして京都・祇園。3つの拠点でタトゥーアーティストとして活動する「美漸(Bizen)」。彼が彫り続けるモチーフ「般若」には、どんな哲学が込められているのか。そして、かつて不良少年だった彼を変えた「タトゥーとの出会い」とは。今回は、美漸さんご本人へのインタビューをもとに、その人物像と作品に込められた想いを紐解いていきます。あわせて、Netflixの恋愛リアリティーショー「ラヴ上等」出演をきっかけに大きな話題を呼んだRUNE999(ルネ)さんと美漸さんの縁についてもご紹介します。

タトゥーに救われた少年時代

美漸さんが生まれ育ったのは、米軍基地と住宅団地が隣接する神奈川県厚木市。「友人にはドライバーで人の目をえぐるようなタイプもいた」と語るほど、治安の良くない環境で少年時代を過ごしたといいます。

そんな彼が出会ったのが、タトゥーという表現でした。「タトゥーがなかったら、今ごろどんな道を歩んでいたかわからない」と振り返るように、タトゥーとの出会いは彼の人生そのものを大きく変えることになります。19歳で湘南彫ふじ氏に弟子入りし、7年間の修行を経て独立。それから約15年、第一線でタトゥーアーティストとして活動を続けています。

美漸さんが語る「タトゥーは究極のアート」という哲学

美漸さんにとってタトゥーは、単なる絵画や芸術作品とは一線を画す存在です。キャンバスに描いた絵は一箇所に留まりますが、タトゥーを入れた人はその後、日本中、そして世界中を旅したり人生を紡いでいきます。つまり、自分の作品が「人と一緒に移動し、世界中の人の目に触れる」という点が、他の芸術表現にはない唯一無二の魅力だと語ります。

この「体を通して世界に広がっていくアート」という考え方こそが、美漸さんが「タトゥーは究極のアート」と表現する理由です。

表参道・原宿・京都祇園 — 3つの個性を持つ拠点

美漸さんが展開する店舗は、現在3拠点。それぞれの土地柄に合わせた個性ある空間づくりがなされています。

店舗名エリア特徴
Bizen Art Tattoo(メインショップ)東京・表参道美漸さんの拠点となるメインスタジオ
和を重んじた内装で、盆栽は毎週替えるといったこだわり
Bizen Art Second東京・原宿「Bizenart Beauty」を体験でき、光脱毛やメラニン除去が可能。
Bizen Art Tattoo 京都祇園店京都・祇園本物の瓦や黒地に銀糸を織り込んだ畳など、和の意匠を取り入れた新店舗

メインショップ(表参道)「Bizen Art Tattoo」

メインショップの表参道店は「Bizen Art Tattoo」として運営され、和を重んじたシックな雰囲気で、観光客やインバウンドの客層にも入りやすい空間づくりも施されています。奥にはVIPルームも用意され、盆栽を毎週入れ替えるというこだわりも。これは特に海外からのゲストに好評だといいます。

新店舗・京都祇園の魅力

2026年、美漸さんは新たに京都・祇園に店舗をオープンしました。東京の店舗には九州や関西からも足を運ぶ客が多くいたことから、関西在住の人々がよりアクセスしやすいようにとの思いで出店を決めたといいます。

「人も、街並みも、空気感も、東京とはまったく違う」と語る美漸さん。歴史と文化が息づく京都には、多くの職人が存在し、東京では出会えない景色や人との出会いがあるとのこと。

看板を飾るのは、EXILE TAKAHIRO氏による直筆の書。
店内には、堤淺吉漆店の漆、小嶋商店の提灯、庄司達馬氏が本物の瓦を一枚一枚用いて制作した壁、龍工房の組紐、横山充氏による黒地に銀糸を織り込んだ畳、そして「京都美漸」のネオン。
伝統を受け継ぐ職人たちの技と、現代の感性が響き合う空間。
過去・現在・未来が融合する、唯一無二の世界観を随所に表現しています。

美と技術を融合させる「Bizenart Beauty」

原宿店で展開する「Bizenart Beauty」は、美肌ケアや光脱毛を提供するスタジオです。脱毛だけでなく、肘などの黒ずみを明るくしたり、乳首の色を変えたりする「メラニン除去」といった施術も行っています。

これらの施術は、タトゥーをより美しく見せるための取り組みの一環でもあります。「タトゥーはかっこいいけれど、こうした施術でさらに美しく見せられる」という考えのもと、全身の美しさをトータルでプロデュースするというコンセプトが「Bizenart Beauty」という名前に込められています。

京都のカフェ「美禅茶寮」にも注目

京都・二条エリアには、美漸さんがプロデュースするカフェ「美禅茶寮 (Bizen-saryo) 」もオープン。タトゥーアーティストが手がける和の空間が魅力で、看板メニューは目の前で点てる本格抹茶ラテ。ベビーカステラとの相性も抜群だと評判です。店内では、弟子である茉凛灼-Mariyaさんがデザインを手がけたオリジナルTシャツやステッカーなどのグッズも販売されています。

美漸さんと弟子同士の絆 — 太陽と月のような2人

美漸さんのもとで修行を積む界螺-Kairaさんは、もともと高校・大学時代からヘナタトゥーやジャグアタトゥーを趣味としていたことがきっかけで、美漸さんの人柄とタトゥーアーティストという仕事の魅力に惹かれ、弟子入りを決意したといいます。

茉凛灼-Mariyaさんは周囲の友人の影響もあり大学在学中から彫師を志したことをきっかけに、美漸さんへ弟子入りしました。

2人はSNS上では「クールで真面目」という印象を持たれがちですが、実際に会うと笑顔が多く、周囲から2人の弟子同士の絆は、「太陽と月のよう」と称されることも。性格はまったく異なるものの、だからこそお互いを補い合える関係だと語ります。
師匠である美漸さんとは意見がぶつかることがあっても、それは対立ではなく「建設的な話し合い」であり、長年共に過ごしてきたからこそ築けた信頼関係があるといいます。

「優しく教える」という、もうひとつの厳しさ

かつてのタトゥー業界は、上下関係が厳しく、怖いイメージが根強くありました。しかし美漸さんは、弟子に対して「優しく教える」スタイルを選んでいます。一見甘く見えるこの方針には、実は大きな意図があります。

優しく接するからこそ、弟子自身が「自分を律する責任感」を持たなければならない。叱られて動くのではなく、自ら考えて行動する力が求められる分、厳しく指導されるよりもむしろ難しい側面があると美漸さんは語ります。

プロとして独り立ちする3つの条件

美漸さんが弟子をプロとして送り出す基準は、次の3点だといいます。

  • タトゥーを彫る技術
  • デザイン力・画力
  • 人間性(人柄)

この3つが一定の水準に達したとき、独立やプロデビューを認めるとのこと。なかでも人間性については、弟子入りの段階である程度見極められることが多いといいます。

変わりゆくタトゥーのイメージと、世代間のギャップ

界螺-Kairaさん・茉凛灼-Mariyaさん自身、タトゥーに対する偏見や差別的な経験はほとんどなく、時代とともにタトゥーへのイメージが大きく変化してきたことを実感しているといいます。かつては雑誌や電話、メールでしか情報を得られなかった時代から、今やSNSひとつで簡単に発信・情報収集ができる時代へ。お二人は、この変化はタトゥーを入れるという決断の「重み」にも影響を与えていると語ります。

だからこそ、美漸さんに教えを請うたアーティストとして、依頼者の想いを軽んじることなく、一人ひとりとしっかり向き合う姿勢が欠かせないと強調していらっしゃいます。

美漸氏が語る、般若というモチーフへのこだわり

美漸さんの代表作として知られるのが「般若」です。タトゥーアーティストを志した当初から般若の絵に惹かれていたといい、その理由は意味合いよりも「単純にデザインとしてかっこよかったから」だと語ります。

当初は伝統的なスタイルの般若を描いていたものの、角や牙、目の形を変えるだけでは大きな違いを生み出しにくいと感じ、自分だけのオリジナルスタイルを模索。試行錯誤を重ねた結果、現在の「美漸スタイルの般若」にたどり着いたといいます。「作品を見ただけで、誰が彫ったか分かる」ことこそが、アーティストとしての誇りだと語ります。

Netflixの恋愛バラエティで話題沸騰 — RUNE999(ルネ)さんとの縁

本動画には、Netflixの恋愛リアリティーショー「ラヴ上等」出演をきっかけに大きな注目を集めたRUNE999(ルネ)さんも登場しています。美漸さんとRUNE999さんの出会いは、共通の友人を介した紹介がきっかけだったといいます。実は直接出会う以前から、同じ場所で何度か顔を合わせていたこともあったそうです。

話題になったのは、共演者たちと一緒に海に入った際のエピソード。RUNE999さんの背中に施された美漸さんのタトゥーを見た共演者たちが、「本物だ」と驚いたというのです。共演者には美漸さんの名前を知る人が多く、加えてRUNE999さんより若い世代の共演者たちの中にも、すでにタトゥーを入れている人が少なくなかったといいます。「本物を初めて見た」「見せてください」と、RUNE999さんの背中に視線が集まったそのシーンは、美漸さんにとっても「彫ってよかった」と実感する瞬間になったそうです。

番組の共演者の中には、般若や能面モチーフのタトゥーを持つ人も複数おり、同じ美意識を持つ者同士が自然と集まっていたのではないか、とRUNE999さんは振り返ります。共演者のように、身体全体を大胆にデザインする若い世代の存在は、RUNE999さんにとって「どんな生き方をしているのか興味が湧く」ほど印象的な出会いだったといいます。

RUNE999さんのInstagramはこちら。

見た目だけで判断してはいけない — タトゥーに込められた物語

RUNE999さんは、番組内でタトゥーを入れている人々と接するなかで、それぞれに固有のストーリーがあることを強く実感してきたといいます。顔に家族の名前の漢字や頭文字を彫っている人もいれば、背中や太ももを大きく覆うデザインを選ぶ人もいる。見た目の印象だけで人を判断するのではなく、その背景にある想いを尊重することの大切さを、RUNE999さんは繰り返し語っています。

タトゥー業界への想い — 「後悔するタトゥー」をなくしたい

インタビューの終盤、美漸さんが強く語ったのが、タトゥー業界全体への危機感です。近年はネット通販で機材を簡単に購入でき、YouTubeなどの動画を見ただけで見よう見まねで彫る人も増えているといいます。その結果、技術が未熟なまま施術を受け、後悔するケースが後を絶ちません。

美漸さんは、こうした「軽い気持ちで彫られるタトゥー」や、それによって悲しい思いをする人をなくしたいという強い使命感を持って、日々施術にあたっています。カウンセリングを重視し、依頼者がどんな人物であるかをしっかり見極めたうえで施術を行うのも、その姿勢の表れだといえるでしょう。

まとめ

不良少年だった過去から、タトゥーという表現と出会い人生を切り拓いてきた美漸さん。表参道・原宿・京都祇園という3つの拠点で、技術だけでなく「人と向き合う姿勢」を大切にしながら活動を続けています。彼が彫り続ける般若には、単なるデザイン以上の、彼自身の生き方そのものが刻まれているのかもしれません。

参考情報

本記事は、YouTube「美漸-Bizen Art Tattoo-」チャンネルに掲載されたインタビュー動画をもとに構成しています。
動画はこちら:「タトゥーは究極のアート」美漸が彫り続ける般若と美学|美漸-Bizen Art Tattoo-

この記事を書いた人

THE INK編集部

原宿のタトゥースタジオ THE INKの編集部。タトゥー業界の「インフラ」となるべく、お客様として訪れる人。アーティストとして働く人。タトゥー用品を選びに来る人のために発信しています。